本邦では過去30年に膵臓がんでお亡くなりになった患者さんがじつに8倍に増えています。原因のひとつとして膵臓がんは早期診断される割合が少なく、根治が期待できる外科手術に至る患者さんがほかのがんと比べても極端に少ないことがあげられます。また、手術をしても術後に再発をしてしまうこともあります。
そこで現在は手術前に膵臓がんの進展範囲、転移や膵臓周囲の臓器、血管への進行具合をしっかり評価し、さらに超音波内視鏡での生検検査で病理診断をおこなって、手術の前にまず抗がん剤による化学療法をおこなわれています。これにより手術後の再発率が下がり、また切除することが難しかった患者さんが手術できる場合も増えてきています。ほとんどの患者さんは通院で化学療法をおこなうことが可能です。金沢大学病院では、放射線科医と内視鏡医、病理医により画像診断、病理診断をおこない、内科医が化学療法をおこなって、外科医が良いタイミング、良い状態で患者さんの手術をおこなえることを目的として、これら膵がん診療に携わる医師が週1回集まって症例検討会を開いています。
いつも温かい笑顔と明るい言葉でぼくら後輩を応援してくれた、ソフィア前理事長の加登先生は、残念なことに膵臓がんで亡くなられました。いま多くの後輩たちが膵臓がんを早期発見、根治できるよう、診療レベルの向上と、治療法、検査法の研究開発に日々取り組んでいます。