とくにイギリス人のユーモアは有名で、何もユーモアのないスピーチなどはあり得ないと考えられています。ユーモアがあると、「くすっと」笑ってしまいます。もっと大きく「わっはっは」と大笑いするのは健康にいいですね。日本では大阪人の笑いを取るレベルが高いです。落語や漫才などの話芸で免疫力を向上させる試みもあります。
緩和ケアでご高名な柏木哲夫先生の「癒しのユーモア:いのちの輝きを支えるケア」などのご著書では、ユーモアで救われる患者さん、医療者と患者さんの関係がユーモアで暖かくなっていくことが描かれています。たとえば、なかなか退院に自信が持てない患者さんに、「私が太鼓判を押しますから退院して大丈夫ですよ」と、「太鼓判」と彫った実際の大きなハンコを患者さんに見せたところ、病室が大爆笑となった話は印象的です。
医師には陽気さと適度のユーモア、そよ風のような快活さ、「心が南を向いている性質」が必要です(オスラー)。人間の生老病死を扱う医学・医療では、暗く、厳しい「北(冬)」の場面に出会うことが多いです。患者・家族も「北(冬)の心」で閉ざされているときもあります。そのときこそ医師は「南(春・夏)の心」を持って、癒すべきです。つらい時こそユーモアを忘れないようにしたいものです。
ユーモアを忘れずに
対話 ユーモア 医師
Motoo Yoshiharu
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金沢医科大学 名誉教授 元雄良治
Motoo Yoshiharu
金沢医科大学 名誉教授 元雄良治
金沢医科大学 名誉教授 元雄良治
1980年東京医科歯科大学医学部卒業。1984年米国テキサス州ダラス・ワドレー分子医学研究所に2年間留学。金沢大学がん研究所腫瘍内科講師、准教授を経て、2005年金沢医科大学腫瘍内科学主任教授・集学的がん治療センター長に就任。最先端のがん治療においてチームリーダーとして活躍した。2021年金沢医科大学名誉教授、小松ソフィア病院腫瘍内科部長に就任。訪問診療にも従事し、患者・家族との対話を重視した「全人的がん医療」をめざして、地域での啓発活動にも尽力している。著書「全人的がん医療」、「まるごとわかる!がん」、「漢方でできるがんサポーティブケア」。
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がん治療の第一線で活躍される医療機関・医師のみなさまや教育現場の方、
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