『やさしさを つなげて飾る れんげ草』
三月のある日、症状を和らげたり終末期の方が療養したりする緩和ケア病棟の病室にあったれんげ蜂蜜をきっかけに、患者さんとれんげ草の話題になりました。れんげ草は田畑に蒔くと肥やしになり、一面にピンクの花を咲かせ、おいしい蜜まで採れます。ちなみに花言葉は偶然にも『和らぐ』。ふたりで子規の句を鑑賞した翌日、その方が詠んだ句です。
患者さんが小学生の頃、友達とれんげ草を摘んで花冠を作っていると、向こうから農家のおじさんが大声(『れんげを摘むな!』とか?)をあげて近づいて来るから、靴も履かずに走って逃げたそうです。がんが脳に転移し『失語症』という言葉が出にくい状態にも関わらず、その時のことを思い出し一生懸命に詠んでくれました。
それからというもの、自然や趣味をテーマにして、自作またはお気に入りの句を交換するようになりました。患者さんは人生を振り返り、私も自己開示することで、互いの価値観が知れ関係性が深まりました。言語機能のリハビリ効果もわずかにありました。
れんげ畑を見ると、なにもなくても楽しかった子供の頃にタイムスリップし、自然と表情が和らぐのです。
蓮華草 我も一度は 小供なり (子規)