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加登大介 コラム一覧

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白衣のマント

白衣のマント

白衣のマント

緩和ケア 終末期 緩和ケア医

Kato Daisuke

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市立砺波総合病院 緩和ケア科 部長 加登大介

英語で『緩和』を意味する言葉は “palliative” ですが、その語源は “pallium” で、『マント・コート』という意味があります。中世の時代、病や怪我で傷ついた巡礼者を看病した施設が現在のホスピスの起源だそうですが、そこで病人を布で包み温かくケアしたことが『緩和ケア』という名の由来と言われています。私が慕う知人は、緩和ケアの研修会を開催するたびに、このことを説明するためどんなに暑い日でもマント(ケープ)を羽織って熱心に語っていました。

私の好きなモクレンは冬の間、産毛に覆われた毛布のようなつぼみの中で寒さを和らげ、春先にほころんでめいめいに白や紫の花を咲かせます。がんをわずらう患者さんでも、きちんと苦痛を和らげられたなら、その人らしさが表情や言葉にあふれ出てくることに似ていると感じます。がんによる苦痛を和らげるのに欠かせないのが『オピオイド』という薬で、今では医師なら誰でも安全かつ上手に使うことが出来るようになりました。

現代になっても、世界中には病や紛争、災害のため毛布に包まれる人がたくさんいます。緩和ケアの対象とする人はその中のわずかですが、今日もマントならぬ白衣を羽織って患者さんのところへ足を運びます。

Kato Daisuke

市立砺波総合病院 緩和ケア科 部長 加登大介

市立砺波総合病院 緩和ケア科 部長 加登大介

職歴:虎の門病院 内科、血液内科、臨床腫瘍科、緩和医療科 医長/日本バプテスト病院 ホスピス/富山市民病院 緩和ケア内科 主幹
主な資格:日本内科学会内科認定医/日本血液学会血液専門医/日本緩和医療学会緩和医療専門医/日本臨床倫理学会臨床倫理認定士