日本の胃がんの患者さんが減ってきた最大の理由は、ピロリ菌の感染率が下がってきたからです。
衛生状態の改善とともに感染率は年々低下し、1950年生まれの方の推定感染率が60%あったのに対して、2000年生まれの方は10%程度に減少しています。ピロリ菌に感染しているかどうかは、内視鏡の際の検査はもちろん、血液や尿・便でも検査できます。
もっとも信頼性が高いのは「尿素呼気試験」で、検査薬の錠剤を飲んで、吐き出した息で検査します。陽性の場合、内視鏡で胃炎の程度や胃がんがないかをチェックしたあと、治療します。
日本は世界のなかでも熱心にピロリ菌の治療に取り組んできました。治療は「除菌」とよばれます。ピロリ菌が生きていくには「胃酸」が必要ですので、胃酸を減らす薬と抗菌作用をもつ2つの抗生物質を7日間服用します。
メニューは全国共通で、1回目の一次除菌の成功率は約80%です。もし除菌に失敗した場合は、抗生物質を変更する二次除菌で約90%の方が除菌に成功します。除菌は胃炎がすすむ前に若いうちにおこなった方がよいと考えられ、一部の自治体では学校検診に導入されています。
佐賀県では中学3年生が尿でピロリ菌の検査をおこない、陽性であれば治療の補助も受けられます。これは素晴らしい取り組みですし、ぜひ効果をあげて全国に広がっていくことを期待しています。
ピロリ菌の治療
胃がん ピロリ菌
Takatori Hajime
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金沢大学附属病院 光学医療診療部 部長・准教授 鷹取元
Takatori Hajime
金沢大学附属病院 光学医療診療部 部長・准教授 鷹取元
金沢大学附属病院 光学医療診療部 部長・准教授 鷹取元
金沢大学附属病院 消化器内科に所属/公立松任石川中央病院,ソフィア内科クリニックでも診察しています。/消化器内科医24年目を迎えます。専門は内視鏡診断と治療。/モットーはわかりやすい説明と丁寧な内視鏡。/趣味は鉄道と温泉,お酒を美味しくいただくことです。
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