少し進んでいて内視鏡治療では治癒が難しいと判断された場合は,外科手術を検討します.外科手術と内視鏡治療の最大の違いは,食道の全体と,さらに周囲のリンパ節も一緒に切除できることです.食道を切除して,胃を細くして食道のかわりにする手術が主流です.近年は食道の周囲に細いカメラと手術器具をさしこむ胸腔鏡や,「ダヴィンチ」に代表される手術ロボットの支援下でおこなう手術が中心です.また手術の前に抗がん剤による化学療法をおこなってから手術することで手術成績が向上しています.
手術が難しいと判断される場合にも,有効な治療法があります.食道がんは放射線治療の効果が出やすい“がん”です.以前から放射線と化学療法を同時におこなう,「放射線化学療法」の有効性が知られています.治療の完遂までは6週間ほどかかりますが,非常に有効な治療法です.食道がんの化学療法に用いる薬剤の選択肢も増えてきています.以前のコラムでも紹介した新しい種類の治療薬であるニボルマブ(オプジーボ)や,イピリムマブ(ヤーボイ)の成績が良好であることから,つい最近つかえるようになりました.
もしも,放射線治療後に食道にがんが再発してしまった場合であっても,内視鏡を用いた光線力学療法(PDT)という治療法があります.金沢大学病院も北陸地区唯一の治療施設としてPDTをおこなっています.
このように食道がんの分野では診断,治療が大きく進歩しています.消化器内科,外科,放射線治療科がスクラムを組んで,患者さんに最適な「集学的治療」をおこない,さらなる治療成績の向上を目指しています.