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冬来たりなば春遠からじ

冬来たりなば春遠か...

冬来たりなば春遠からじ

医師 がん患者

Motoo Yoshiharu

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金沢医科大学 名誉教授 元雄良治

 「冬来たりなば春遠からじ」は英国の詩人シェリー(Percy Bysshe Shelley, 1792-1822)の「西風の賦」にある一節で、寒い冬が来るということは、それに耐えれば必ず暖かい春が来る、つらい時を乗り越えれば、必ず幸せな時は来るということです。実際につらい時期にこのように前向きに考えることは難しいことも多いでしょう。

 がんと診断されたときの衝撃は人生を一変する出来事です。しかし、それはいろいろな場面があります。大腸内視鏡検査で偶然見つかった大腸ポリープが実はがんであったと告げられることもあります。大腸がんは日本人が罹患するがんの数で第一位である理由の一つに、日本では大腸内視鏡が普及していることが挙げられます。健診で便潜血反応が陽性であれば、大腸内視鏡検査が勧められます。これまで一度も大腸内視鏡検査を受けたことのない人が一大決心で検査を受けたところ、早期の大腸がんが見つかることがあります。

 一方、すでに進行した状態でがんが発見されることもあります。女性のがん死の原因の第一位は大腸がんです。しかし、現在大腸がんの治療法は進歩しており、薬物療法によって、以前は半年くらいの生存期間が3年以上に延びています。実際に5年、10年治療を継続しながら通常の生活を送っている患者さんもいます。

 がんと闘う時期は冬の時代かもしれませんが、春の到来を信じて前向きに生きること、あるいは完治が望めない状況でも、自分らしく一日一日を大切に生きること、こうしたことを考えることは人生においてとても大切です。

Motoo Yoshiharu

金沢医科大学 名誉教授 元雄良治

金沢医科大学 名誉教授 元雄良治

1980年東京医科歯科大学医学部卒業。1984年米国テキサス州ダラス・ワドレー分子医学研究所に2年間留学。金沢大学がん研究所腫瘍内科講師、准教授を経て、2005年金沢医科大学腫瘍内科学主任教授・集学的がん治療センター長に就任。最先端のがん治療においてチームリーダーとして活躍した。2021年金沢医科大学名誉教授、小松ソフィア病院腫瘍内科部長に就任。訪問診療にも従事し、患者・家族との対話を重視した「全人的がん医療」をめざして、地域での啓発活動にも尽力している。著書「全人的がん医療」、「まるごとわかる!がん」、「漢方でできるがんサポーティブケア」。