「夏雲や 伸びゆく稲に 風そよぐ」。これは私が小松ソフィア病院の訪問診療で見た風景をそのまま詠んだものです。「風わたる」でもよいかなと思います。俳句では「~や、~かな」などは「切れ字」というそうです。俳句は五七五、季語、そして切れ字を使うという原則を守れば、誰でも作れます。しかし、いざ作ろうと思っても、なかなか難しいですね。やはり日々の生活で、人・事物・自然などと自分が触れ合い、何か自分の心の中で動きがないと俳句は出てきません。冒頭の一句は、訪問診療の車中から見えた夏雲と、ぐんぐん伸びていく稲の葉が風にそよぐ風景が心に響いたからできたのだと思います。5月に田んぼに植えられた苗が日一日と伸びていくことに毎回感動していました。自分もこんな勢いで何かの分野で成長していきたいとも思いました。
私が学生時代に師事した脳神経解剖学教授の萬年 甫(まんねん はじめ)先生は、高浜虚子編の俳句集を読んでいたところ、「みづほ」という作者の句がとくに印象深かったそうです。それが後年、「日本脳外科の父」と讃えられた新潟大学脳神経外科学の中田瑞穂教授とわかり、大変感激され、新潟の地でお会いできたそうです。私は新潟大学の先生から、中田瑞穂先生の「学問の 静かに雪の 降るは好き」の栞を頂いたことがあります。
これからも折々の俳句を書き留めていきたいと願っています。
俳句もいいですよ
医師 健康・予防 趣味
Motoo Yoshiharu
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金沢医科大学 名誉教授 元雄良治
Motoo Yoshiharu
金沢医科大学 名誉教授 元雄良治
金沢医科大学 名誉教授 元雄良治
1980年東京医科歯科大学医学部卒業。1984年米国テキサス州ダラス・ワドレー分子医学研究所に2年間留学。金沢大学がん研究所腫瘍内科講師、准教授を経て、2005年金沢医科大学腫瘍内科学主任教授・集学的がん治療センター長に就任。最先端のがん治療においてチームリーダーとして活躍した。2021年金沢医科大学名誉教授、小松ソフィア病院腫瘍内科部長に就任。訪問診療にも従事し、患者・家族との対話を重視した「全人的がん医療」をめざして、地域での啓発活動にも尽力している。著書「全人的がん医療」、「まるごとわかる!がん」、「漢方でできるがんサポーティブケア」。
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がん治療の第一線で活躍される医療機関・医師のみなさまや教育現場の方、
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