「冬来たりなば春遠からじ」は英国の詩人シェリー(Percy Bysshe Shelley, 1792-1822)の「西風の賦」にある一節で、寒い冬が来るということは、それに耐えれば必ず暖かい春が来る、つらい時を乗り越えれば、必ず幸せな時は来るということです。実際につらい時期にこのように前向きに考えることは難しいことも多いでしょう。
がんと診断されたときの衝撃は人生を一変する出来事です。しかし、それはいろいろな場面があります。大腸内視鏡検査で偶然見つかった大腸ポリープが実はがんであったと告げられることもあります。大腸がんは日本人が罹患するがんの数で第一位である理由の一つに、日本では大腸内視鏡が普及していることが挙げられます。健診で便潜血反応が陽性であれば、大腸内視鏡検査が勧められます。これまで一度も大腸内視鏡検査を受けたことのない人が一大決心で検査を受けたところ、早期の大腸がんが見つかることがあります。
一方、すでに進行した状態でがんが発見されることもあります。女性のがん死の原因の第一位は大腸がんです。しかし、現在大腸がんの治療法は進歩しており、薬物療法によって、以前は半年くらいの生存期間が3年以上に延びています。実際に5年、10年治療を継続しながら通常の生活を送っている患者さんもいます。
がんと闘う時期は冬の時代かもしれませんが、春の到来を信じて前向きに生きること、あるいは完治が望めない状況でも、自分らしく一日一日を大切に生きること、こうしたことを考えることは人生においてとても大切です。