先日、山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』という映画を観ました。話が進むにつれ、ふと自分自身が武田鉄矢や桃井かおりの視点で映画を観ていることに気がつきました。主人公を幸福の黄色いハンカチへと導く手助けをするふたりの視点です。自宅に戻ることを諦めかけた主人公を『万が一(離婚した妻が)待ってくれていたらどうするの』と諭すシーンと、風になびくたくさんの黄色いハンカチを呆然と眺める主人公の背中を押すシーンが特に印象に残りました。
緩和ケアでは、良くも悪くも万が一への備えを怠りませんし、患者さんの希望を叶えるためにタイミング良く後押ししようと手を尽くします。そんな習慣のせいか、いつのまにか自分をふたりに投影して観入っていたのかもしれません。映画は、『ハッピーエンド』の素晴らしさを余韻にたっぷり残して幕を閉じました。
ハッピーは必ずしも与えられるものではなく、時には自分から求めることも必要です。ですから是非みなさんの方からも緩和ケアのドアをノックしてほしいのです。ドアの先には、あなたらしいピースマークを自然と作ることの手助けをしてくれる誰かがいます。きっと、とびきり素敵な写真が撮れるはずです。