“緩和ケアを受けると長生きする”『まさか!』と思われた方おられるでしょう。少し前は医療従事者も、そんなこと思いもしませんでした。でも2010年、ある研究が有名な医学雑誌に掲載されました。それは、がん治療だけを受けた患者さんに比べて、がん治療と緩和ケアを受けた患者さんの方がおよそ3ヶ月長生きしたのです。3ヶ月とはいえ、そんな治療薬が見つかれば大ニュースになりますから、それは大きなインパクトでした。
それ以前から日本でも緩和ケアは注目されていましたが、これを機にますます重要視されるようになりました。そして今では、緩和ケアは抗がん剤や手術などの抗がん治療と並んでがん医療の中心となり、国も“早期からの緩和ケア”と銘打って、がんの進行度に関係なく、抗がん治療と緩和ケアを同時に受けることを推奨するようになりました。
もちろん緩和ケアでは、がんを小さくしたり治したりする治療はしません。クスリなどで症状を和らげ、いろいろな話し合いを重ねるだけですが寿命が延びる。このことは、緩和ケアが病気ではなく、その人全体を対象にしていることを示す証しだ、と私は思います。いかがでしょう、緩和ケアに関心が湧いてきたでしょうか?